京都、たまゆら肝のぞき

2017年12月13日 更新

其の一 毘沙門堂門跡

山寺に隠された悟りの襖絵こそ、おもてなしの審美学
狩野派が仕掛けた才知溢れるトリックアート、襖絵や天井絵の数々に思わず小膝を打つ。己の慧眼をも問われる門跡寺院。

霊殿の天井で待ち受ける「ねじれ龍」の逸話

天井絵のねじれ龍

天台宗五門跡のひとつ。室町幕府のお抱え絵師となって400年、逆遠近法で描かれた狩野派の障壁画が多数残る。まず霊殿で迎えてくれるのは、狩野永淑主信(かのうえいしゅくもりのぶ)の天井龍。龍を仰ぎながら霊殿を一巡すれば、龍の頭の向きがみごとに変化するから凄い。別名「ねじれ龍」の異名を持ち、天龍寺の天井絵で筆を揮った加山又造、その周囲さえも感嘆したという逸話が残る。

狩野益信の超絶逆遠近技巧!動く襖絵とは如何に

文机の襖絵

御所にあった後西天皇の旧殿を拝領し、移築した宸殿には狩野益信が画いた「九 老之間」が配され、その襖の中に描かれた文机は、それを見ながら襖に沿って歩くと、ある地点で机がまったく向きを変えてしまうという、摩訶不思議さを体感する。一眼レフのレンズでは動画でその効果を発揮することができず、人間の二つの眼が、どれほど鋭い感覚を持っているかが実によく解る絵でもある。

「梅の間」に隠された、招かれざる客の符号とはこれ如何に

竹にしまひよどり

「白鷺の間」と襖一枚隔てて「梅の間」という応接間が配されている。「招かれざる客の間」とは誰が呼んだのだろうか。この間に通された客人は待てど暮らせど次の間に迎えられることはないという。その謎は襖絵に隠される。襖絵に描かれている「梅に鶯」「竹に雀」の図は、よくよく見れば「梅に山鳥」「竹にしまひよどり」といった、取り合わせのない図であることに気付く。そう鳥が合わず 「取り合わない」ということなのだ。客人の力量さえ試される婉曲の間である。

圓山応挙が得意の写実手法で会得した逆遠近法

圓山応挙の板戸の鯉の図

旧書院にあったという板戸に画かれた鯉も、なんと見る方向によって、鯉の跳ね方が如実に変化する。しかもこの鯉といえば、写実的様式で描かれているから二度驚かされる。この寺を訪れた圓山応挙が逆遠近法に魅せられ、この手法を会得するまではこの寺を去らないと決めた、その完 成形と聞く。

毘沙門堂門跡(びしゃもんどうもんぜき)

住所
京都市山科区安朱稲荷山町18
アクセス
JR琵琶湖線山科駅から徒歩約20分
TEL
075-581-0328
拝観時間
8:30~17:00(12月~2月16:30)
拝観料
500円
URL
http://www.bishamon.or.jp/

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